きとう氏の死去
2012年。きとう氏は闘病のかいなくお亡くなりになりました。
氏のような高名なコレクターがなくなるときは、コレクションの整理人が指名され、その人がコレクションを他のコレクターなどに売って遺族に販売代金を渡すしきたりがあります。
この風習は、貴重なコレクションが捨てられたり二束三文で売り渡されて行方不明になるのを防ぐためなのですが、もちろん、遺族の方に渡る金も、捨てたり二束三文で売り渡されたときよりずっと多くなります。購入するコレクターも、普段よりはかなり安い金額でコレクションを入手できます。一つしかない貴重な美術品なども、こういうしきたりのおかげで滅失を防ぐことができるのです。
それより何よりも、家族がコレクションを次々と捨てていく夢を臨終の床で見るなんてのは、コレクターにとって最悪の悪夢以上の何物でもないと思います。この風習はコレクター本人のためでもあるし、だからこそ、きとう氏はあらかじめ整理人を指名して亡くなられたのだと思います。
さて、指定された整理人は遺言のとおり、氏の膨大なジッポーライターの整理を始めますが、そのとき整理人が驚いたのは、まとまった数のカイロのコレクションがあったことでした。ハクキンカイロのコレクションの存在は、整理人には伝わっておらず、遺族も知りませんでした。
整理人も遺族もどんなものか価値も全く見当のつかないハクキンカイロのコレクションは、当然のように捨てられる運命にありましたが、整理人が、コレクターとしてこれだけのコレクションを単に捨てることはできない、と判断。捨てる話はいったん棚上げになりました。そしてそのあと当サイト作者がきとう氏とハクキンカイロを通じて接点があったことがわかり、そしてこうしてこのコレクションを紹介する段になったわけです。
軍隊御用パッケージ
もちろんきとう氏は輸出用ばかりではなく国内向けも熱心に集めていました。当サイトに出ている戦前型とかは舌なめずりしながら見ていたとおっしゃっていましたが、まあ半分以上はお世辞でしょう。ただ、古いものが好きだったのは事実のようです。こちらは新品未使用の軍隊御用パッケージの1つです。よほど気に入っていたのか、3分割して保管してありました。

メモ書きに「軍2」とあるので、氏の所有「軍隊御用」パッケージとしては2個体目という意味なのかもしれません。
「軍隊御用」の文字は、当社の製品は軍も使用するほど品質のよいものなのだぞ、というのを誇示するためのいわば宣伝文句で、この表記のあるものがすべて軍用モデルというわけではないようです。(もちろん、全く同じものが軍にも納品された可能性はあります)
この軍隊御用パッケージはいろいろ謎なところがあって、きとう氏も製造時期などについてはいろいろ考察していたようです。
サイト作者が確認したところこの個体は磁石につかず真鍮製であることが分かりました。
このコレクション品にもきとう氏らしい几帳面さが垣間見えるところがあるのでそちらのご紹介です。3つのビニール袋全部に、クリーム色の小さな丸いシールがついています。氏はパーツと箱がセットであることを示すために、こんな目印をつけることがよくありました。シールの色や個数で見分けるのです。ただ、だんだんコレクションが増えると、組み合わせが足りなくなってしまったのか、シールにAなどと文字を書いたり、シール1個半とか、こんな小さなシールを切って貼ったりよくまあやっているなと思うようなこともやっていました。以前紹介した海外用PACOCKのように、シールのないものも多いです。あるいは特に重要と考えた品にだけこの小さな目印シールを貼ったのかもしれません。
写真ではみえませんが、外箱の中には前回紹介した段ボールで作った型崩れ防止用の枠が入っています。相当几帳面な人だったんだなあ、と、思います。
もちろん、これもセロハンテープで連結されていませんでした。
さて、話題は変わるのですが、
このきとうコレクションの話はもうちょっと続きがあるのですが、その前にやっぱりハクキンカイロ100周年公式動画の話もどうしてもしたくなっちゃっているので、第4回と第5回の間か、第5回と第6回の間かどこかで一度そっちの話をしますので、きとうコレクションの話はどこかでまた1週遅れるかと思います。あしからずご了承ください。