きとうPEACOCKコレクション(8)


初めにお会いしたとき、きとう氏は当サイト作者に、ハクキンカイロのコレクションはサイト作者から始まった、とおっしゃいました。
いろいろな意味で持ち上げすぎだし、それに自分はコレクターではない。古いハクキンカイロを探しているのは、火口の互換性とかを確認するためだ、と言ったのですが、そのとき氏は、同じものを3個持っていればコレクターですよ、と言いました。
何かのフロンティアだと言われたら、たいていの人は(サイト作者も含めて)嬉しいだろうし、今にして思えば、人を楽しませたり喜ばせたりすることに長けていた人だったし、だからこそいろんな人がきとう氏の周りに集まって、そしてZippoのコレクションもどんどん充実していったのでしょう。

今にして思うと、氏が同じものを3つ持っていればコレクターですよ、と言ったのは、いろんな意味であなたは仲間ですよというつもりだったのでしょう

アメリカの狩猟用品カタログ

今回できとうコレクションの品を写真付きで紹介するのはいったん終わりにします。
そんな回を飾るのが、実はハクキンカイロではないのですが、でも、サイト作者的には非常にきとう氏らしい品だと思ってます。
この品は段ボールの板とか、購入した品がきとう氏のもとに送付されたとき使われたと思われるボール紙の封筒にはさまっていました。メモ書きとかもなくて、氏としてはコレクション品のつもりではなかったのかもしれません。でもこれできとう氏のやっていたことのほんの一部が垣間見えるのです。

アメリカの狩猟用品カタログです。おおざっぱに言うとライフル銃などのカタログです。
というかもう表紙からして銃のオンパレードです。サイト作者だとこれがライフル銃なのか散弾銃なのかも見分けはつきませんが。

中にもずらっと銃の絵と説明と価格が書いてあるページが続くのですが、もちろん、弾丸の絵や価格とか、狩猟に必要な用品が一通り全種類掲載されています。その中にこんなページがありました。

銃のパーツとかいろいろよくわからないものがたくさん掲載されています。左ページの上のほうは、獲物の鳥をおびきよせるためのおとり用(デコイ)です。そしてこのページの下の方に、なんだかなじみのある形をした製品が載っています。ちょっと拡大してみましょう。

これはたぶん輸出用PEACOCKです。21と番号がついているので、21番の説明を見てみると、ちょっと気になることが書いてあります。
まず、このどう見てもPEACOCKにしか見えないカイロ(文中の表現はPOCKET HAND WARMERS)。何故かブランド名がありません。ただし、スタンダードサイズであることは記述から分かります。(6オンス=約170gってのは箱ベンジンカップ込みでもちょっと重すぎな気もしますが)
そしてそれ以上に気になるのは下段のGIANT SIZEのところです。こちらにははっきりとブランド名が書いてあって、Jon-E GI hand warmerと書いてあります。つまりこちらは他社製で、ハクキンカイロではないのです。

このカタログで、スタンダードサイズは明らかにハクキンカイロ製なのに、GIANT SIZEはハクキンカイロ製ではないものを掲載している、ということに注目です。ここから類推できるのは、このカタログが刷られた年にはハクキンカイロ(つまり、PEACOCK)は、まだGIANT SIZEを製造販売していなかったのではないか。
あらためてこのカタログの表紙を見てみると。1953という文字があります。
そうすると以前第3回で紹介した、きとう氏がGIANTの発売年を1954年と推定しているということと話がかみ合うのです。

ハクキンカイロの歴史は、他社製との戦いの歴史でもありました。他社が似たものを出すと、すぐさま次の年にはほぼ同じ形状同じかそれ以上の性能のものを発売して対抗する。ハクキンカイロはずっとそれを繰り返してきました。サイトのほうにも書いてありますが、コンパクトはどうも楠灰製造があの形のものを先に出してきて、ハクキンは後追いらしい。サンパッドも、ナショナルが先に背嚢式を出してきて、ハクキンカイロは後追いです。

きとう氏はこれを見てこう推測したのではないでしょうか。つまり、GIANT SIZEはJon-Eが先に出してきていて、ハクキンカイロは後追いなのではないか。1953年にJon-EがGIANT SIZEが発売されたので、急いで翌1954年にPEACOCK GIANTを作ったのではないか。そうすると、きとう氏がPEACOCK GIANTの登場を1954年と考えていることと、話がかみ合うのです。
日本市場にGIANTを投入しなかったのも、日本にはJon-Eはやってこなかったから投入する必要もなかったのではないか。サイト作者はそう思うし、きとう氏もそう思ったのではないでしょうか。

Wikipediaで調べると、このカタログを作った会社は、19世紀創業のカタログショッピングの会社で、全盛期はシカゴに巨大倉庫があったそうです。その後いろんな多角経営を始め、1985年に閉鎖されたとありました。

サイト作者が不思議なのは、きとう氏が何故このカタログを持っていたのか。
ジッポーライターが載ってたりしたのならまだ分かるのですが、Zippoを含めライターは載っていないのです。
それに、狩猟用品カタログにハクキンカイロが載っているなんて、何故分かったのか。ひょっとすると載っているかもしれないから的な理由で購入したのか?でも、コレクション品の中に狩猟用品カタログはこれ一つしかありませんでした。
あるいは海外のコレクターから、このカタログにもPEACOCKが載ってたからおまけにつけといてやるよ的な形できとう氏のもとにやってきたのかもしれません。