当サイトにも、そしてハクキンカイロ公式サイトにもずっと書いてある、発熱量13倍あるいは13倍の暖かさの表記。
それって本当なのかという挑発的な、そしてほとんど公式に喧嘩売ってるようなタイトルだし、違うと思うなら自分のサイトのほうからまず値を消せよとも思われそうですが、こんなことを書き始めたのは、やっぱりちょっと変じゃない?と思うからです。その理由の第1は、
この表現、「発熱量」とか「暖かさ」みたいに表記に少しゆれはあるのですが、一貫して、ハクキンカイロは使い捨ての13倍、なのです。そして一番重要なのは、この13倍という数字が、20年間ずっと変わっていないことです。
いくら何でも20年もたてばハクキンの火口の性能も上がるし、それ以上に使い捨てカイロの技術革新も進むでしょう。でもどうしてこの13倍という数字はいつになってもずっと変わらないのか。それと、
この13倍という数字は、どこの誰がどの方法で確かめたのかもまた、どこにも書いてないのです。普通だったら(当社調べ)とか書くし、お手盛りといわれるのを防ぐために、第三者機関とかに調べてもらったりします。でも、そういう記述がされたことすらないのです。もちろん、ハクキンカイロは(当社調べ)なんて書く風習のなかった時代から商売してるんだからないのだといえばそれまでですが。
で、ハクキンカイロの発熱量とかを測ったり調べたりしている人とかを探したのですが全然ない。あってもハクキンカイロの使った数字を元に、ハクキンカイロはこの値だから使い捨てはこのくらいみたいなことを書いているところばかりです。
今はハクキンカイロ公式サイトからは記述が消えていますが、昔、ベンジンの発熱量は1mL当たり11500calと書いてありました。ネットで調べると、この値がひっかかるところがあります。かくいう当サイトも昔そう記載していたのですが、(ハクキン公式から数値が消えたので今は出してません)この値、いくら調べてもそんな値にならないのです。2003年当時はネットでデータが見つからなくて難儀したのですが、今でははっきりとした機関が出した数値があるのでお見せします。
資源エネルギー庁が出している、エネルギー源別標準発熱量。ここにある「エネルギー源別標準発熱量・炭素排出係数一覧表(EXCEL形式:83KB)」というEXCELファイルをごらんください。ここにさまざまな炭素系燃料の発熱量が載っています。「ガソリン」のところを見てください。ここにある値は7970kcal/Lつまり、1mL当たり7970calなのです。カイロ燃料のベンジンはぶっちゃけたことを言うと自動車用の添加物を入れる前のガソリンです。つまりこの値は代表できると考えられるし、そのすぐ上にあるナフサの欄を見ても発熱量はたいして変わりません。まあ、11500calは今はハクキンが出している数字ではないのだからいいのですが3割も値が違うのは何故か。これは、このあと紹介するブログの作者も指摘しているとおり、どうもベンジン1mLが1gだとハクキンが本気で勘違いしていたっぽいです。何しろハクキンカイロは戦前から「油槽は二十五瓦(コツプ二杯)」(追記:瓦はグラムの漢字表記です)とかずっと書いてて、しかもその時代のベンジンカップの容量を調べると見事に2杯で25mL(重量にすると約20g程度ぶん)しかなかったので、ひょっとすると先祖代々、ベンジン1mLは1gだと勘違いしていた可能性はあります。なおベンジン1mLは約0.7gなので、gとmLを勘違いしていたのだとすると、かなりはっきり数字が一致します。
前述したこちらのブログの値がわりとまっとうかと思います。この方は資源エネルギー庁の値とは別に、カイロ用ベンジンの熱量は8078cal/mLという値を出しています。この値はおそらくある程度正確かと思いますが、この方の計算だと、ハクキンカイロの発熱は9.79W、そして使い捨てカイロの発熱は5.33Wになっているのですが、これは明らかに体感的におかしいのです。この方の計算が合っているならば、ハクキンカイロ1個よりも使い捨て2個のほうが暖かい計算になりますが、実際はそうはならない。
それ以上に、ハクキンカイロSTANDARDに比べて持続時間対燃料量が2倍になる機種、具体的にはこはるやナショナルカイロミニやうす型(一般的に出回っているナショナルカイロ、ナショナル黄金カイロは標準型です)よりも、使い捨てカイロ1個のほうが暖かい計算になってしまうのです。いくら何でもそれって計算がどこかおかしくない?
どうしてそういうことが生じるのか。まず第一に、使い捨てカイロ内の鉄粉は、使用時間内に全量が反応するわけでない、というのが一つ目の理由です。たとえば10時間のカイロを使ったとき、10時間経って使い終わってもそのあと数時間微妙に生ぬるいままだらだらと反応が続きます。この方はその分の発熱も、使用時間の10時間の間に発生したとして計算してしまっているのでまずそこで計算が合わないのです。
ほかにもいくつも計算が合わなくなる理由は見つかります。第二の理由。ハクキンカイロも使い捨てカイロも、空気中の酸素を使って反応します。そして、ハクキンカイロは、反応後すぐにその熱を反応時に発生する水蒸気や二酸化炭素の形でカイロの外に吐き出します。ところが、使い捨てカイロの場合、取り込んだ酸素はカイロ内部で反応したあと、そのまま化合物(水酸化鉄)の材料になってカイロ内にとどまります。そして使い終わるまでカイロの外に出てきません。
何がいいたいんだ。というと、要するに、たとえば気温10℃のときに使い捨てカイロを使うと、10℃の酸素を取り込みます。そして反応して熱は出ますが、その熱は外部に放出される前に、取り込んだ酸素を10℃から30℃なり40℃に温めるために使われてしまい、その熱はカイロが反応をすべて終えてから、つまりぬるくなってからでないと外部に放出されてこないのです。しかもこの酸素量は結構な量になります。けれど、ハクキンカイロの場合、反応後、反応に使用された酸素はカイロ内にとどまらず、すぐに水蒸気(の原料)や二酸化炭素(の原料)となって、つまり熱をもった気体としてカイロ外に吐き出されてくるのです。
つまり、使い捨てカイロとハクキンカイロは、ただ暖かいだけの電気ストーブと、送風機付きヒーターくらい、しくみが全然違うのです。
そして、カイロ使用時に計算に繰り入れてはいけない発熱があります。さっきの、持続時間を過ぎてから無駄に微妙にぬるいときの発熱もそうだし、使い捨てが冷えている酸素を温めるときに使う熱もそうです。それに、この計算は使い捨てカイロに入っている鉄全量が規定時間内に反応している計算になってますが、実際には100%すべての鉄が反応しきってるわけではなさそうです。
それを言ったらハクキンカイロだって規定時間内にベンジン全部が反応しているわけではないんじゃないか。それに、ベンジン臭がするんだから、未反応で放出されるベンジンだってあるはずじゃないか。まさにそのとおりで、そういう、計算に入れてはいけないぶんの熱量を全部はじきだすのがどちらにしてもとても難しいのです。
それとこのブログ作者は、40gの使い捨てカイロが9時間で完全に反応する計算にしてるのですが、当サイト作者の知る限り、40gで持続時間9時間というカイロはあまり売ってないようです。40gあったら普通は20時間タイプが(2025年現在では)主流です。仮に20時間タイプだったとすると、発熱は2.4W、発熱はハクキンカイロのほうが4倍となります。
それでも、こはる1個より使い捨て2個のほうが暖かいというのはちょっと体感とずれがあるのですが….
(小林製薬の桐灰カイロ マグマ(貼らないタイプ)という高温で短時間12時間タイプの製品も存在します。こちらを上記ブログ作者の計算式で発熱を計算すると4.0Wとなります)
ではどうやったら、実際にカイロとして使用する際の発熱量がはじき出せるのか。サイト作者なりにやってみたのですが、そこまで化学に詳しくないので、この計算がちゃんとしているのか分からないので今回のところは書かないでおきますが、それでも使い捨ての5倍から6倍の発熱はありそうだという、今のところの推測です。
※そんなわけで、当サイトでは「13倍」表記は順次消していきます。
“ハクキンカイロの発熱量は本当に使い捨ての13倍か” への3件のフィードバック
鉄の反応ですが、酸化鉄ではなく水酸化鉄になっている分が多い可能性がありますね。使い捨てカイロの成分にも水と書いてあったりします。
水酸化鉄は標示生成熱が酸化鉄の2/3位なので、その分使い捨てカイロの熱が弱くなります。
オンパックス14時間タイプでざっくり計算14kJ/h位、同じ計算方法でハクキンカイロが41kJ/hになりました。14時間ぴったりで反応止まってこれなので、ダラダラ発熱分を考えると4倍〜5倍はかたそうですね。
わざわざ計算ありがとうございます。3600で割るとオンパックス14時間が3.89W、ハクキンが11.39Wになるようですね。ただ、カイロに関しては単純に発熱量だけで暖かさを測ってはいけないっぽいほかの要素があるようです。具体的には、25℃で300時間発熱するが30℃で分解してしまう新素材xがあったとして、その発熱量を測って使い捨ての何倍とか言っても、その熱はカイロの暖かさとしては使えない無意味な熱なのです。このへんもっともっと詳しい人がいないと素人では計算ができません。それに、それでもオンパックス2個のほうがこはるやナショナルミニより暖かいというのはやはり実感と差があります。14時間タイプのオンパックスははるカイロですよね。接着剤と内袋の分は重量から差し引かなきゃならないしちゃんとした計算は思ったより面倒そうです。