火口の再生


このネタは以前もやったのですがこれから実験編に書き足します。

ハクキンカイロの火口は劣化し、そのうち使えなくなります。そうなった火口を何らかの形で再生して再び使えるようにする。そんなことができればいいのですが、世の中そんなにうまくいかなくて、火口の再生ってのは根本的に不可能なのです。その理由を次に挙げます。

どうして火口が劣化するのか。一番の理由は、火口の触媒部分のガラス繊維。これがハクキンカイロの出す熱によって徐々に減っていく。つまり、使用するたびに、物理的に火口の触媒部がだんだん減っていくのです。使い倒した火口の触媒をよく見てみれば、中央部がくぼんでいるのが分かります。触媒は物理的に減少し、そしてこれは今の技術ではどうにもしようがありません。ガラス繊維よりもより耐熱性があって安価な素材が見つかれば、可能性はあるかもしれませんが。
もう一つの理由は、触媒の白金に煤などのゴミがこびりついて性能が低下する、ってのもあります。

いろいろな方法を試したけれど、再生できたといえるようなものは一つもなくて、どんな方法をとってもせいぜい数日程度延命できる程度でした。なので積極的にサイトに上げることはしないでいたのですが、冬山登山中に火口が寿命になって絶体絶命。この火口が復活しないと命にかかわるみたいな人が当サイトを見てないとも限らないので、数日程度でも効果があった方法を列挙します。

1.だめになった火口の触媒部を上下ひっくり返す。
2.だめになった火口の触媒を2枚重ねる。
3.だめになった火口の触媒を縦に半分に切り、そのまま右半分を左に、左半分を右に移す。
※いずれの方法をとるにしても、触媒部を手で直接触れるのは避けること

3.だけはちょっと説明がいると思うので付け加えると、触媒の劣化するのは主に中央部分です。端のほうはあまり劣化しないのです。そこで中央で切って元々端であった部分を中央になるように移し替えると、数日くらいは延命できます。ただし、触媒が火口から外れやすくなるというデメリットもあります。

ただこれらの方法をとっても、延命できるのはせいぜい数日くらいです。点火できなくなった時点で(というかそれ以前に)換火口をすぐ注文することを強く推奨します。

ネットには火口の洗浄とかやってる人もいますが、サイト作者の経験ではその方法では再生しません。一度炎上させたことがあるような火口だと、煤が洗い流されてうまくいくこともあるかもしれませんがサイト作者は推奨しません。それに、洗った時点で、ガラス繊維に付着している肝心の白金触媒も一緒に洗い流されてしまいます。

アルコール洗浄法

でも。そうならない洗浄方法があるのではないか。そう考えて考案した方法が次のとおりです。ハクキンカイロ一式と燃料用アルコールとペットボトルのキャップ、タオルを使用しました。

4-1.まず、火口をバラして触媒部を取り出し、逆さにしたペットボトルキャップの中に入れます。このとき触媒部は手で触れないようにします。ピンセットとかがあったほうがいいです。
次に、燃料用アルコールをペットボトルキャップの中に入れます。触媒がひたるくらいまで入れます。
そして燃料用アルコールが完全に蒸発するまで放置します。臭いのと、一応は燃料用アルコールの主成分のメタノールは毒物なので、ベランダ等雨のかからない野外に置くのがよいかと思います。
燃料用アルコールが蒸発しきったら(サイト作者は冬期に2日で蒸発しました)、火口を元通りに組み直します。

4-2.次に、カイロ用ベンジンをベンジンカップの下の線のさらに半分くらい分(約3mL)まで入れてカイロに給油し、点火します。点火できたらば、ある程度まで火口が再生できているのが分かりますが、ここからが本番です。

4-3.完全に反応が終わってから、今度はカイロに燃料用アルコールを入れます。カップ1杯から1杯半(12~19mL)程度。そして点火します。アルコール臭がしてくさいのと、前述したとおり燃料用アルコールは一応は毒物なので、タオルでぐるぐる巻きにしてやっぱりベランダ等に置き、反応が終わるのを待ちます。

4-4.反応が終わるとカイロからはかすかにすっぱい匂いがします。反応時に発生した劇物のホルムアルデヒドの匂いです。正直、このくらいの量なら健康上の問題はなさそうなのですが、気になるようなら再びカイロにカイロ用ベンジンを入れて点火し、タオルでぐるぐる巻きにしてベランダ等に放置し、残ったアルコールとホルムアルデヒドを蒸発させます。すっぱい匂いがしなくなったら終了です。

4-5.以後は普通に使います。

この方法で点火困難になった火口がその後2週間以上使えているので、それなりに効果はあったかと思います。なお4-2.の工程は省略してもいいかもしれません。

この方法の原理はまず4-1.の工程で煤落としに効果のあるアルコールを使用して文字通り煤を落とします。そしてこの方法のキモは4-3.で燃料用アルコールを入れて点火するところです。どうしてこの工程が必要なのか。それは、燃料用アルコールの主成分であるメタノールは、放っておいても完全に蒸発するし、仮に反応が中途半端に終わったとしても、その際にできる成分はすべて完全に蒸発する成分だけだからです。つまり、アルコールを触媒反応させた場合、反応しきれずにヤニになって残る成分がありません。そして、その反応のついでに、触媒に付着したヤニ成分(主に炭化水素)も一緒に反応させてもらうことを期待しています。
要するに、4-1.で煤を落とし、4-3.でヤニを焼き切るという2段階方式です。

※原理的には燃料用アルコールの代わりにメタノール(有毒です)、消毒用エタノール(濃度95%以上のもの、無水エタノールも可)も使用できると思います。(が、試してません)
※消毒用エタノール(濃度95%以上のもの、無水エタノールも可)のほうが人体への毒性が低く、発熱量も大きいので、ひょっとするとこちらを使ったほうが効果があるかもしれません。ただし、価格が高いです。
※通常の「消毒用エタノール」は、たいてい濃度76.9~81.4%くらいなので使えません(そもそも発熱しません)。

※原理的にはイソプロパノール(イソプロピルアルコール)でも同じ効果が期待できます(が、試していません)。こちらも市販されているものは濃度が低いものが多いので95%以上の濃度のものを使用してください。

当然ながら、劣化の仕方によってはこの方法でも再生できない場合があります。特に、ガラス繊維部分がぼろぼろに崩れたりして減りすぎている場合は再生できません。


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