ベンジン容器の保管(と腐食)


ベンジン容器が腐食して中身が漏れ出してきたというメールを送ってきていただいた方がいらっしゃいましたのでご紹介と対処方法を書かせていただきます。

ケイさんという方から、ハクキンベンジンの容器と燃料用アルコールの容器を横置きにしてブリキ缶の中に入れておいたら、1年で腐食して中身のベンジンが漏れ出してきた、とのことです。画像も送っていただいたので紹介します。

※Zippo缶は空だそうです。

この純正ハクキンベンジンは、2017年に出荷が終了したモデルですが、4年ほど前にこのようにブリキ缶の中に入れてクローゼットで保管して夏を越えたところ、容器のネジ部分がバカになっていて中身が出てきたそうです。1本は封も切っていなかったとのことなのですが、中蓋の開栓する部分に切れ目が入って、やはり中身が出てきていた、ということです。
缶の中がベンジンまみれになり非常ににおい、中身も半分程度になっていたということでした。引火などの心配もあり、危険な状態だったといえます。

こちらは切れ目が入った中蓋部分です。

ケイ氏は保管場所が30℃を超えることがあったので内圧で中蓋や栓が損傷したのだろうと推測しています。また、ボトルには冷暗所に保存という表記はあったが横置き禁止という表記がなかったことも気にしていらっしゃいました。

ただ、当方もほぼ同一形状ほぼ同一素材の他社製ベンジンを横置きにして4年ほど保存していますが、このような腐食をしたことはありません。あの暑すぎる2024年と2025年の夏を越えたはず、確実に30℃を何度も何十度も越えたはずのところで保管していたはずなのに、です。それに、横置きで30℃を超える場所に置いておいた、というだけで液漏れ事故が起こるのなら、もっとたくさんそういう話があってもよさそうだし、ネットでそういう話をする人もいるはずなのに、そういう話はここ3年、聞きませんでした。
また、当方のサイトには内圧で破損したと思われる2種類の(ベンジン用でない)容器の写真を載せてあります(こちらとこちら)が、どちらも大きく裂け目が入ったりバラバラに割れたりしています。が、ケイ氏のものにはそのような大きな力が加わったような形跡が見られません。

ケイ氏の容器は恐らく、アルコール蒸気がベンジン容器を腐食させて液漏れが発生したのだろうと考えられます。
ハクキンベンジンを含む多くのベンジン容器に使用されているポリエチレンテレフタラート(要するにペットボトル)は、少なくともベンジン容器に使用されているものは、ベンジンには耐性がありますが、アルコール耐性はありません。
山の世界では燃料用アルコールはペットボトルに入れてはいけないというのは常識中の常識になっています。ベンジン容器の中栓はポリエチレンですが、たたいてもすぐに曲がらない高密度ポリエチレンはアルコール耐性がありますが、押すとぐにゃっと曲がる低密度ポリエチレンはアルコール耐性がありません。ベンジン容器の中栓のポリエチレンは、ひっぱると曲がるので低密度で、アルコール耐性がありません。アルコールもベンジンと同じように、容器に入れて完全に栓をしても少しずつ蒸気の形で漏れていきます。(もちろん漏れる量はベンジンに比べて非常に少ないので、通常は減っていることはほとんど気にならないあるいは気付かないかと思いますが)密閉した缶の中に一緒に入れてあったので、アルコール蒸気が缶の外に出ず、少しずつベンジン容器を腐食させた、と、サイト作者は考えます。

この記事はあとで少し整理してサイトのほうにも上げておきます。

これを防ぐためには、

(1) ベンジン容器は横置きで保管しない。また、換気の良いところで保管する。
(2) ベンジン容器は他の薬品と一緒に保管しない。具体的には、アルコール、シンナー、塩酸や硫酸、苛性ソーダなどの腐食性のある、あるいは刺激の強い薬品類、「まぜるな危険」表記のある洗剤、防虫剤、農薬などとは一緒の場所に置かないようにする必要があると考えます。

2026.9.8 ,9.9一部追記

ひょっとすると当方の言い回しが悪くてちゃんと意味が通じていないかもしれないと不安になったので追記します。何しろ純正ベンジンとその容器の安全性についての問題なので、変に誤解されてネットで曲解した情報を触れ回ったりされても困りますので。

まず、純正ハクキンベンジンの容器はベンジン容器としての問題性はありません。ケンエー燃料用アルコールの容器も、アルコール容器としての問題性はありません。前述したとおり、この時代のハクキンベンジンの製造元のジャパンエナジーは大手の石油会社で、そこが変な容器を使って液漏れや火災などが起きたら、それこそ大ダメージです。そして書き忘れましたが、ジャパンエナジーは半世紀以上の長きに渡って純正指定ハクキンベンジンを製造し続けてきました。そのような会社がまず変な容器を使うわけはないし、仮に問題があったとしたら、すぐに仕様変更がされているはずです。そして現に幾度も容器には改良が加えられてきました。最初期の容器はごく普通の褐色ガラス瓶で、フタも普通のネジのフタでした。そのフタが容器を倒してもすぐ中身が多量が出てこないように注ぎ口となり、容器自体も割れるガラスからペットボトルに変更になりました。そこまでやっている、そして半世紀作り続けてきた企業だからこそ、ジャパンエナジー製純正ハクキンベンジンの容器は、横置きで30℃のところに置いたくらいでは内圧で中身が吹き出すようなことはない、と、サイト作者は考えます。それに前述したとおり、ケイ氏の容器が漏れた2023年よりももっともっと暑い2024年と2025年に、サイト作者の横置きの他社製ベンジンは漏れなかったし、そういったネットの記述も(しょっちゅう「ハクキンカイロ」とかでエゴサしてましたが)見かけませんでした。
内圧でない、と判断できる材料はほかにももっとあって、それは、使いかけ、新品の両ボトルが、(新品のほうだけ中蓋が裂けた、という点はあるにしろ)ほぼ同時期に同じようにネジがバカになって中身が出てきた、というところです。使いかけと新品では内圧のかかり方が全く違うはずで、同時期に起きたというのは少しおかしいし、内圧のかかりかたが違う以上、損傷も別の場所で起きる可能性のほうが高いはずです。
まださらに内圧が原因でないと強く推測できる理由があります。もし内圧が原因ならば、容器は大きく変形しているはずです。具体的には、この純正ハクキンベンジン容器は底が少しへこんでいます。吹き出すくらいの内圧がかかったのならば、たとえば底は逆にボコっとふくらむはずです。また、吹き出すときも、当サイトにある写真のように、吹き出した場所、注ぎ口やボトルに大きな裂け目ができたり、粉々に割れたりするはずですがそのような変化も起きていません。内圧で、ベンジンに直接触っていないはずのネジ山だけがこすれて減るというのもおかしいし、(圧力は、接している面にのみかかります)仮に本当にそうだとしたら、まず、ボトルのクチの部分が外側にふくらむように変形し、それによって同じ方向にネジ山がこすれたりしてけずれて、ネジ山の隙間からベンジンが漏れ出してくるはずですが、クチがふくらんだような跡も、けずれたような跡も、写真では確認できないのです。また、それほどの内圧がかかったのならば、ボトル+注ぎ口と分厚くなっているネジ山部分ではなく、より薄いボトルの底や注ぎ口の頂上部分に先に変形が起きているはずです。(へこみや折れるようなつくり(ボトルの底や底の円周部)は内圧に対して弱いです)
当サイト作者は、暑すぎるところに置いたために内圧でふくらんだ炭酸飲料のボトルを見たことがあります。容器は底の部分が膨らんで元に戻らなくなっていて、(なので立てておくこともできませんでした)開封して飲んだら炭酸が全部抜けていてまずかったです。
破裂すると危険な場合、容器やフタの一部を内圧に対して弱く作っておき、内圧がかかりすぎるとその部分がわざと損傷して破裂を防ぐ、という安全対策がとられている薬品容器もあるにはあります。が、このハクキンベンジンやケンエー燃料用アルコールの容器にはそのような対策はされていないようです。また、そのようなタイプの容器の場合、危険な内圧がかかったのを示すため、そして容器が再利用されるのを防ぐため、破損したところがあえてよく分かるようにつくられています。

ベンジンがボトルに入れておくだけで目減りしていく話は当サイトに書いてありますが、燃料用アルコールもそうだとは書いていないしネットにもそんなことは書いていない。燃料用アルコール蒸気が出てベンジン容器が腐食したというのは健栄製薬に対する言いがかりじゃないか、と言われるかもしれないのでそちらについても付記しておきます。前述したとおり、ボトル類に入れてあって、常温で放置すると揮発する液体は、新品状態でも、ボトルを厳重に閉めておいても、必ず少しずつ揮発していきます。たとえばペットボトル入りの水。災害備蓄用に賞味期限が5年とか長期のものがありますが、5年経つと劣化して飲めなくなるのかというとそうではなくて、少しずつ中身が蒸発して目減りしていって、5年も経つと容器に書いてある内容量が保証できなくなるので賞味期限が記載されているのです。水の沸点は100℃です。けれど、100℃にならなくてもこのように水は蒸発していくのです。アルコールやベンジンも同じです。ベンジンは沸点が30℃だから蒸発するけれど、燃料用アルコールの主成分のメタノールは68℃だから蒸発しないはずだ、ということではないのです。
でも健栄のボトルにはそんなこと書いてない、ホームページにもない。もちろんそうですが、でもそんなことは飲用水のペットボトルにも、カイロ用ベンジンのボトルにもメーカーのホームページにも書いてありません。
ベンジンの沸点は30℃くらいなので30℃を超えたら内容物全量が沸騰して一気に大きな内圧がかかったのではないかという考えもあるかもしれませんが、沸点30℃の物質が30℃で沸騰するのは周囲が1気圧の場合です。内圧がかかっている時点で、30℃で沸騰しません。また、ベンジンは混合物のため、特定の温度で一気に沸騰はしません。ベンジンの成分には-40℃で沸騰する成分もあれば、100℃を超えても沸騰しない成分も混じっています。少なくとも、気温30℃のときにベンジン容器を見たことはありますが、容器内でベンジンが沸騰しているところは、サイト作者は見たことがありません。

そして、ケンエー燃料用アルコールのボトルには、こうも書いてあるのです。「容器を密閉して涼しく換気の良いところで施錠して保管すること。」これは今出荷中のものにある注意事項ですが、ケイ氏のものの時代にも書いてあったはずです。これは、明らかに、中身が徐々に揮発していくことを前提として書かれたものです。そして、涼しくない、そして換気の悪い缶の中にベンジン容器と一緒にしておいたからこそ、漏れたアルコール蒸気によってこのようなベンジンの液漏れが発生した、と、推測できるのです。
だったら同じようにケンエー燃料用アルコールを栓をして何ヶ月も置いておいて、目減りするのか確かめればよいではないか、というと、ベンジンのときと違ってそんなに単純に確かめられないのです。それはアルコールには親水性がある、つまり水と一緒にすると混じってしまって分離してこない、という性質があるためです。アルコール容器の中に水蒸気が入り込むと、(栓をしていても中のアルコールが蒸気となって出ていくのと同じように、空気中の水蒸気はアルコール容器の中に入っていってしまうのです)アルコールと混じってしまうのです。このため、下手すると、中身入りのアルコール容器の質量は、日が経つと逆に増えてしまう可能性すらあるのです。(質量は増えても、アルコールが増えたわけではありません。水が混ざった分、アルコールとしての質は低下しています)ベンジンには親水性がないのでこのようなことは起きません。

何度も書きますがこの純正ハクキンベンジンの容器はベンジン容器としては問題ありません。ケンエー燃料用アルコールの容器も、アルコールの容器としては問題ありません。が、両者を中身入りで密閉して同じ場所に置くと、両者ともに容器が腐食して中身が出てくる可能性はあります。アルコール容器はベンジン蒸気に晒される設計になっていないし、ベンジン容器はアルコール蒸気に晒される設計になっていないからです。ベンジン容器はなんだかんだいってどのメーカーもボトルは同じような半透明で、内圧を考えてかPETボトルのはずなのに炭酸飲料などのPETボトルに比べ、かなり厚手になっています。内圧による破損を危惧しているのかどこのメーカーもかなり厚いプラスチックの注ぎ口がついています。一方、燃料用アルコールの容器はどこも不透明で、注ぎ口はなく、中央に小さな穴のある中栓が必ずついていて少しずつしか中身が出てこないようになっています。(この中栓の構造には法令上の規制もあります。酒類もアルコール濃度が高いものは引火防止のためこのような中栓がついています)。それぞれのボトルの素材、構造等は、これまで何年何十年そしていくつもの事故を経て、改良されてきているのです。もちろん今のものは完璧ではないかもしれませんが、非常に安全なものが使用されている、といっていいと思います。もちろん、どちらの容器も、中身入りで火のそばに放置とかしたら確実に破裂または中身が出てきて火災になります。ただそれはメーカーの責任ではないでしょう。

2026.9.13、14追記


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