楠灰ゴールド懐炉

資料提供:かもなべ氏

楠灰製造のベンジン式カイロです。製造元の楠灰製造はもともと灰式カイロメーカーで、(サイト作者の知る限り、)最後まで灰式カイロを作っていた日本唯一のメーカーでしたが、昔はハクキンカイロに対抗してベンジン式も出していたようです。(ただし、現在は灰式カイロはメインの商品ではなく、使い捨てカイロが主力製品のようです)
説明書の記述から、昭和31年(1956年)以降のものだということが分かっています。
ただし、写真にとったこの製品は確かに1956年以降製ですが、それ以前の初期ロットがある可能性があります。少なくとも、微妙に違う別ロット品があったことは(サイト作者が)確認しています。

楠灰の(現行の)灰式カイロのページはこちら


カイロ本体です。ハクキンカイロでいうと、コンパクトに非常によく似たモデルなので、当時のコンパクトと一緒に並べてみました。
布張りの金属製のケースの中にカイロ本体が入っていて、ケースが右開きというところまで同じです。

開いてみたところです。


パッケージの中身です。
上から順に、燃料注油用スポイト、カイロ本体、カイロが入っていた袋(赤い丸いものは封印です)、説明書です。


試してみたところ、ハクキンカイロの当時の2本爪火口やU火口がつきました。要するに互換機だったようです。現行PEACOCK火口とは微妙にクチの大きさが違いますが根性で使おうと思えば使えるかもしれませんが、きっとハクキンカイロも楠灰もどっちも保証はしてくれないでしょう。火口のつくりは当時の2本爪火口やU火口よりはその少しあとのUU火口や海外向け#SB火口に似ていました。
コンパクトに似ていますが、ひょっとするとこの型のものは楠灰のほうが先で、ハクキンカイロは後発かもしれません。当時、ハクキンカイロは、他社が似たようなベンジン式カイロを作ると、対抗してほぼ同スペックのものをすぐに出してくるという過酷な商品開発競争を繰り広げていました。

製品のつくりですが、後発だけあってそれなりには考えています。たとえば、ハクキンカイロコンパクトのベンジンカップは、カイロ本体をケースから外さない注油できませんが、楠灰のほうはスポイトなので外す必要がありません。もっとも、このスポイトで4回注油しないと満タンにならないのですが。
カイロ本体はハクキンカイロのものより微妙に小さいような気がするのですが、容量は約24mlで24時間保温と、ハクキンカイロコンパクトとほぼ同じ性能だった模様です。

それ以外にもいろいろと謎の残る製品です。まず、「ゴールド懐炉」という商品名ですが、この時代にあった、松下電器の「ナショナル黄金カイロ」にかなり似ています。楠灰が先なのか、松下が先なのかは不明です。ただ、パッケージからすると、楠灰は商標登録はしたようです。
なお、楠灰製造は、2005年現在、「ゴールド懐炉」の商標は所持していません。既に切れているようです。


2010年頃から楠灰製造のホームページが全くつながらなくなり、その後、楠灰製造の健康保険組合等が解散した等の告知がありました。楠灰製造製と見られる灰式カイロも、この頃から市場から姿を消しています。


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