70年ものの綿


先週まで暖房なしではいられなかったほど寒かったのに、すっかり暖かくなってきました。そろそろカイロも片付けの季節です。でも片付けネタは去年やったし、そんな季節の狭間にどんなネタをと思ったのですが、そういえば今シーズン連続使用してきた、戦後の輸出モデル。もうすっかり綿も痛んでいるだろうと思い、どうせなら片付ける前に綿だけでも取り出しておこうと思ったら、状況は想像以上でした。

この製品は遅くとも1952年以前製造のものなので、製造後72年以上経過しているのは確実です。でもって見れば分かるとおり綿の状態がむちゃくちゃひどい。ほぼ全体が茶色く変色し、ボロボロと崩れて粉になってしまい、原型どころか綿であったことすら判別しにくいくらいにむちゃくちゃ劣化していました。

この綿、製造から72年間取り替えられていないと思います。少なくとも、当サイト作者が入手してから約20年弱、一度も取り替えませんでした。それ以前の時代のことは分からないじゃないか! と言われそうですが、かなり特殊な特徴を持っているので、72年前のまま、取り替えられていないのは確実だと思います。その特徴とは、フタと綿の間にある、型崩れ防止の金具です。現行商品ではここはボール紙になっています。戦前のものもボール紙です。が、このモデルのものは金属製なのです。(戦前の換え綿に、金属パーツがついているものもありますが、場所と形状等が異なります)輸出用モデルには惜しげもなく高いパーツを使っていたことが、ここから分かります。

なお、綿の劣化がひどすぎる理由ですが、多分、最初期の持ち主が使った燃料があまり質のよいものでなかったのではないかと思います。今のカイロ用ベンジンだと、焦げみたいのはできますが、こんなボロボロと粉のように崩れることはありません。単なる経年変化じゃないかと思われるかもしれませんが、当サイト作者の手元にある戦前の純正換え綿は、多少黄ばんではいますが、こんな粉状に崩れたりはしていません。

この時代のハクキンカイロ(正確には社名変更前の矢満登商會)は、繰り返し、粗悪燃料を使わないようにアナウンスをしています。悪い燃料を入れると綿がボロボロになる的なことは当時の販売店向けチラシに書いてあるので、この劣化は燃料の品質によるものと思って間違いないと思います。

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“70年ものの綿” への2件のフィードバック

  1. 凄い事になってますね。手元に引出し式から交換した綿が保管してありますが、形状は残ってましたから使用後でも経年劣化ではこうはならないと思います。

  2. こんなに劣化していると分かっていればもっと早く交換していたのですが。タンクのクチ付近はこんな触るだけでボロボロ崩れるような劣化はしていなくて、内部の深いところがボロボロでした。最近不調だったのはひょっとすると綿のせいかもしれません。

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